民事再生のお悩みについて

民事再生手続は、債務者が資金に行き詰まったり債務超過の恐れがあるなど困難な状況にある場合に、裁判所の関与の下で、債務者(経営者)の自主性を尊重しながら事業の再生を図る手続です。

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民事再生とは

民事再生の最大の長所は、債務の支払を原則として全て一時ストップし、資金と時間の余裕を確保した上で再生計画の作成に取りかかります。債務のカットを中心とする再生計画案を債権者の多数決で実行できる(反対債権者が存在しても可能)点にあります。
資金が苦しい会社を再生するには、何よりも債務の支払を止め、再生計画を検討する時間を確保する必要があり、この点で、民事再生は、弁済禁止の保全処分が用意されていますし、正式に民事再生を始める決定(開始決定)が発令された場合には、法律上会社は原則として債務の弁済が禁止されます。
弁済禁止の保全処分とは、裁判所から正式に開始決定が発令される前に、債務会社に対し一時的に債務の弁済を禁止する決定です。債務会社がこの保全処分を受けると以後弁済してはいけない状態になり、その後開始決定が発令されますと、法律上債務の弁済(支払)が禁止される結果、債務会社は債務の支払から合法的に解放され、再生計画を作成する資金と時間の余裕を得ることができます。
債務会社は再生計画の作成に取りかかり、債務免除を中心とする再生計画を作成して債権者集会に諮り、賛成多数となれば反対債権者の債権も含め全員の債権カットが認められます。
私的整理の場合と比較するとよく分かるのですが、法律の原則では債務の免除をうけるには全債権者の同意が必要となります。どのように合理的な提案であっても、債権者が気に入らなければ債権のカットは本来できないのです。そのため、私的整理では債権者全員の同意を得ることができなければ、実際上債務会社の再生を実現できないのが現実です。
しかし、民事再生では、債権者集会で多数決で過半数の賛成を得ることができれば、たとえ大口の、あるいは有力な反対債権者がいても、再生計画案(債務カット案)が成立し、全員の債権カットができるのです。しかも、残残債務の配当(弁済)は利息を免除された上で、5年間から10年間の分割弁済となります。
これが民事再生の最大のメリットです。このように、支払を一時停止したうえで、大幅な債務カットが認められ、しかも10年間までの分割弁済が認められるので、民事再生が成功すれば会社の資金繰りは劇的に回復します。
また、現経営陣が経営権を手放すことなく、つまり経営者の立場にとどまったまま債務者主導で会社の再建を図ることが出来るという利点もあります。同じく、再建型の法的整理手続である会社更生は、原則として会社の経営権、管理権は裁判所が選任する更生管財人に移り、現経営陣は退陣しなければなりませんが、民事再生では原則として現経営陣の退陣は求められないというメリットがあります。

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民事再生のメリット・デメリット

  • メリット

    民事再生は、大きな魅力を持っていますが、それ故に、法律上複雑な構成となっています。また、担保権( 別除権) の取扱いや当面の資金繰りに対する配慮など、高度で専門的な判断が随所に求められます。
    民事再生に失敗した場合には破産手続になってしまうため、民事再生を利用するのか、再生計画案の内容は妥当かなど慎重の上にも慎重を期す必要があります。

  • デメリット

    民事再生も倒産という受け取り方が一般的ですので、倒産との風評被害により会社の信用が傷つく可能性があります。
    また、裁判手続ですから、①裁判所に対する費用( 裁判予納金) と②申立てを行いその後手続の進行に当たる弁護士の費用が必要となります。

民事再生にかかる費用

裁判所の予納金

裁判所予納金は、負債金額に応じて決まることになっていますが、裁判所によっても若干相違があります。大阪地方裁判所での取扱いは次のようになります。

大阪地裁 予納金の目安(監督委員委任型の場合)

負債総額申立ての予納郵券履行監督費用に係る追納金額
1億円未満300万円以上80万円以上
1億円以上5億円未満400万円以上
5億円以上10億円未満100万円以上
10億円以上20億円未満120万円以上
20億円以上25億円未満150万円以上
25億円以上50億円未満500万円以上
50億円以上100億円未満600万円以上160万円以上
100億円以上250億円未満800万円以上180万円以上
250億円以上500億円未満900万円以上
500億円以上1000億円未満1000万円以上200万円以上
1000億円以上1100万円以上250万円以上

弁護士費用

弁護士費用も負債金額が一つの基準となりますが、個別事案の特殊性(担保権の取扱い、債権者の数など)によっても相当に異なり個別性が強いので、ご相談の際にご提案致します。

民事再生手続の流れ

再生手続開始の申立て
保全処分
監督命令
裁判所が、会社の重要な財産上の行為等(財産の譲渡、譲受け、借財、手形の割引など)について監督を行う監督委員を選任する命令です。今後行う仕入の支払などの通常業務については、通常通り行うことができます。
再生手続開始決定(数日~2週間程度)
民事再生手続に従った手続を開始するのが相当と裁判所が判断した場合に、裁判所により再生手続開始決定がなされます。
再生債権届出期限(数日~2週間程度)
裁判所から債権者に対して、再生債権届出書が送付され、債権者のほうで必要事項を記入のうえ、裁判所に送付する手続です(民事再生法94 条)。
財産目録、貸借対照表、報告書提出期限(6~8週間程度)
会社の一切の財産について、再生手続開始の時における価額を評定し財産目録及び貸借対照表を作成し、裁判所に提出します(124条1項・2項)。また、再生手続開始に至った事情等、法定の事項について調査した報告書を裁判所に提出します。(125条)
認否書提出期限(10~12週間程度)
再生債権者からの債権届について、その内容及び議決権について、認めるか認めないかを記載した認否書を作成し、裁判所に提出します。(民事再生法101条)。
再生債権の調査期間(12~14週間程度)
再生計画案の付議決定(4~5カ月程度)
事業計画や再生債権に対する弁済率、支払時期等について定めた再生計画案を作成し、裁判書に提出します(民事再生法163条)。再生計画案は、遂行の見込みが必要です(民事再生法169条1項3号・174条2項2号)。
再生計画案の付議決定(5~6カ月程度)
再生計画案の決議(6~7カ月程度)
事業計画や再生債権に対する弁済率、支払時期等について定めた再生計画案を作成し、裁判書に提出します(民事再生法163条)。再生計画案は、遂行の見込みが必要です(民事再生法169条1項3号・174条2項2号)。
再生計画案の認可決定(6~7カ月程度)
再生計画案が可決された場合に、裁判所が再生計画認可の決定をします。(民事再生法174条)
再生計画案の認可決定確定(7~8カ月程度)
再生計画の遂行(計画の定めによる)
再生手続の終結(認可決定確定度3年)
再生計画が遂行されたとき、又は再生計画認可の決定が確定した後3年を経過したときです(民事再生法188条2項)。

ご覧いただいたように、民事再生手続は複雑な手続が同時に進んでいきますので、時間的余裕は思いのほかありません。会社は、この手続対応の他に通常の営業活動を遂行しなければなりませんので極めてハードワークになりますし、民事再生に精通した専門家の助力が不可欠と思われます。

民事再生申立直後の対応

民事再生の申立直後は、これを知った債権者への的確な対応が後手に回りますと通常業務に混乱が生じる可能性があります。一歩先を的確に予測し、適時、適切な対応を重ね、現場を収めていく必要があります。
債権者としては民事再生の申立てを知って不安に駆られ、中には混乱される方もおられますが、申立後6日以内に債権者説明会を開催し事情の説明を行うほか、債権者毎に的確に個別対応を重ねれば、申立後おおよそ2週間程度で債権者も落ちついて参ります。
このほか、どのように些細な問題であっても、当法律事務所(大阪)は、その都度適切にサポート致しますので、経営者の方や従業員の方は業務に専念いただけます。