不動産賃貸の基礎知識③(定期建物賃貸借について)

弁護士の清水です。

今回は,賃貸借契約の中でも特別な建物賃貸借契約である定期建物賃貸借契約についてご説明いたします。

この定期建物賃貸借契約は,商業施設のテナントなどで最近多く利用されるようになっています。

 

建物の賃貸借契約で契約期間が定められている場合,当事者が契約期間満了の1年前から半年前までの間に契約を更新しない旨の通知をしない場合,または,この通知をしても期間満了後も賃借人が建物の使用を継続し,賃貸人がこれに異議を述べない場合には賃貸借契約は終了されず,自動的に更新されます。

そして,賃貸人から更新しない旨の通知をするためには立退料の支払などの正当事由が必要とされています。

これに対し,定期建物賃貸借契約の場合,このような自動更新がなく,契約期間の満了により契約が当然に終了することになります。

 

定期建物賃貸借契約を締結する場合,通常の建物賃貸借契約と異なり,契約書等の書面によって契約をする必要があります。ただし,何らかの書面であればよく,必ずしも公正証書を作成しなければならないわけではありません。

 

また,契約締結前にあらかじめ賃借人に対し,契約の更新がなく,期間の満了により契約が終了することを記載した書面を渡して説明しなければなりません。

この説明がなく契約を締結した場合には,その締結した契約は,定期建物賃貸借契約ではなく,通常の建物賃貸借契約となり,期間が満了しても契約が当然には終了しなくなってしまいます。

 

定期建物賃貸借契約を終了させる場合,契約期間が1年以上である場合には,賃貸人は,期間満了の1年前から半年前までの間に賃借人に対し期間満了により契約が終了することを通知しなければなりません。

この通知につきまして,賃貸人が期間満了の半年前より後に賃借人に対して期間満了により契約が終了することを通知した場合,期間満了の日ではなく,賃借人に通知をした日から6か月経過後に契約が終了することになります。

さらに,契約期間が満了した後に賃借人に対して期間満了により契約が終了することを通知した場合にも通知の日から6か月経過後に契約が終了すると判断した裁判例があります。

 

このように,定期建物賃貸借契約の場合,通常の賃貸借契約とは異なる点が多々ありますので,定期建物賃貸借契約を締結することを考えている場合には,以上のような点にご注意ください。

不動産賃貸の基礎知識②(賃料の増減額について)

弁護士の清水です。

土地や建物について賃貸借契約を結ぶ際,必ず賃料(地代,家賃)額が定められます。土地や建物の賃貸借契約は比較的長期に及ぶこともあり,契約時に定めた賃料が期間の経過により相場よりも高くなったり安くなったりすることがあります。

 

このような場合に備えて,借地借家法は,契約当事者に賃料増減請求権を認めています。

具体的には,賃料が土地・建物に対する租税その他の公課の増減により,土地・建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により,または近傍同種の賃料に比較して不相当になったときは,当事者は将来に向かって賃料の額の増減を請求することができます。

つまり,賃料の額が相場よりも高くなった場合には,借主は賃料の減額を請求することができます。

 

この賃料増減請求権については,まずは当事者間で賃料をいくらにするのかについての協議をすることになります。

この協議が調わない場合,新たな賃料が決定するまでの間、原則として従前の賃料の額を支払うことになります。

つまり,貸主から賃料の増額を請求されている場合,協議が調わなければ借主は従前の額の賃料を支払えばよく,貸主が従前の額の賃料の支払を拒否する場合には供託することができます。

また,借主が賃料の減額を請求している場合,協議が調わなければ借主は従前の額の賃料を支払わなければなりません。

勝手に減額した賃料を支払った場合には貸主から契約解除されるおそれがあります。

 

この賃料増減請求について協議が調わない場合,裁判ではなくまず調停をすることとされており,調停が不成立となった場合に裁判をすることになります。

調停や裁判だけでなく当初の交渉の段階においても,賃料の増減を請求するには客観的に適正な賃料額がいくらかということが非常に重要になってきます。

 

当事務所では,賃料の増減請求について,数多くの事案を取り扱っており,また,不動産業者や不動産鑑定士との緊密な連携も可能ですから,賃料の増減についてお悩みの方は是非とも当事務所までご相談ください。

不動産賃貸の基礎知識①(賃料不払いについて)

弁護士の清水です。

これから数回にわたって賃貸借契約の基礎知識について掲載していきます。

賃貸借契約とは,貸主が借主に対し土地や建物などを貸し,借主がそれに対して賃料を支払う契約です。

この賃料を支払うことは賃貸借契約における借主の義務ですから,1か月分でも賃料を支払わなければ,それは契約違反となります。

売買契約など1回限りの契約の場合,契約当事者のどちらかに契約違反があれば催告をした上で契約を解除することができます。

この催告というのは,いつまでに代金を支払ってくださいというように,相手方に義務の履行を要求するものです。

 

もっとも,賃貸借契約においては,1か月分の賃料不払いによって契約違反となり,催告をした上ですぐに賃貸借契約を解除できることにはなりません。

1か月分でも賃料を支払わなければすぐに賃貸借契約を解除できるとしてしまうと,賃借人は住む場所を失うことになってしまい,あまりに酷だからです。

 

土地や建物の賃貸借契約において,1か月だけ借りるということはほとんどなく,ある程度の期間継続して借りることが通常です。

このような契約を継続的契約といいます。

この継続的契約の場合,1回限りの契約と異なり,契約当事者間の信頼関係が前提となっています。

そこで,契約違反があっても当事者間の信頼関係を破壊しないような事情がある場合には,賃貸借契約を解除できないとされています。

一方,契約関係を継続することが難しい程度にまで信頼関係が破壊されるような事情がある場合には,催告なしで賃貸借契約を解除できるとされています。

 

一般的には,1,2か月程度の賃料の不払いでは解除は認められず,半年程度の賃料の不払いがあれば契約解除が認められる傾向にあります。

なお,一般的によく使用されている賃貸借契約書では,1か月でも賃料の不払いがあれば催告せずに賃貸借契約を解除することができると記載されていますが,この規定に従って解除がなされても,裁判では直ちに解除が認められるわけではありませんので,注意が必要です。

 

以上のように,賃料の不払いがあった場合に賃貸借契約を解除することができるかどうかは,賃料の不払いがあった期間を始め,それ以外の貸主借主間の事情により,信頼関係が破壊されているかどうかが重要になります。

信頼関係が破壊されているかどうかについては,これまでの裁判例等に照らして判断することが必要となってきますので,借主が賃料を払ってくれないなどでお困りの方は是非とも当事務所までご相談ください。

以上

相続に関する基礎知識②(遺言について)~相続についてお悩みのあなたへ~

弁護士の清水です。

相続人ではない人に遺産を渡したい,法律で定められた相続分とは異なる割合で渡したいという場合には,遺言書を作成する必要があります。

また,遺言がない場合には,遺産としてどのような財産が残っているのか,誰がどの財産を相続するのかなど争いになる可能性がありますので,自らが亡くなった後に親族間で争いになるのを防ぐためにも遺言書の作成は有効です。

そこで,今回は遺言書について説明させていただきます。

 

遺言書には、大きく分けて3つの種類があります。下記にあげる3つ以外にも種類はありますがあまり利用されていないため説明は割愛いたします。

・自筆証書遺言

・公正証書遺言

・秘密証書遺言

 

まず,自筆証書遺言ですが,遺言者が遺言書の全文,日付,氏名を自分で書き,押印しなければなりません。

全文を自分で書かなければなりませんので,ワープロやパソコンで作成すると無効となってしまいます。

 

次に,公正証書遺言ですが,遺言者が公証人に遺言の内容を伝え,公証人が作成するものです。

証人2人以上の立ち会いも必要となります。

ほとんどが公証役場で作成することになります。

 

最後に秘密証書遺言ですが,遺言者が遺言書を作成して封をしたうえで公証人にその遺言書の存在を証明してもらうものです。

この遺言書も公証役場に持って行くこととなり,また証人2人以上が必要となります。

 

遺言については,法律で要件が厳しく定められており,この要件を欠くと無効となってしまいます。

せっかく遺言を作成しても無効となっては無意味となってしまいますので,遺言書の作成をお考えの方は当事務所までご相談ください。

相続に関する基礎知識①(相続人について)~相続についてお悩みのあなたへ~

弁護士の清水です。

亡くなられた方の遺言がない場合,原則として法律に定められた相続分に従って,遺産が分割されることになります。

この際,誰が相続人となって,その相続分はどうなるかについて,ご相談を受けることもよくありますので,今回は相続人について説明いたします。

 

まず,亡くなられた方に配偶者(亡くなられた方の夫または妻)がいる場合,配偶者は必ず相続人となります。

その相続分については,配偶者以外の相続人との関係で決まることになります。

 

亡くなられた方に子供がいる場合,相続人は配偶者と子供になります。

その相続分は,配偶者が2分の1,子供が全員で2分の1となります。例えば,子供が3人いる場合には,各自の相続分は6分の1となります。

子供が既に亡くなっている場合には,その亡くなった子供の子供,つまり孫が相続人となります。これを代襲相続といいます。

この場合,亡くなった子供の相続分が孫全員の相続分になります。

先ほどの例でいうと,3人いる子供のうちの1人が既に亡くなっていて,その亡くなった子供のところに孫が2人いた場合には,その孫2人の相続分はそれぞれ12分の1になります。

 

亡くなられた方に子供がいない場合,相続人は配偶者と親になります。

その相続分は,配偶者が3分の2,親が全員で3分の1となります。

両親が既に亡くなっている場合には,祖父母が相続人となります。

 

亡くなられた方に子供も親もいない場合,相続人は配偶者と兄弟になります。

その相続分は,配偶者が4分の3,兄弟が全員で4分の1となります。

 

亡くなられた方に配偶者がいない場合も同じように子供がいれば子供,子供がいなければ親,子供も親もいなければ兄弟が全てを相続します。

 

相続人については,生前に親子の縁を切っているので,相続人にはならないはずだという相談をたまに受けることがあります。

しかし,法律では,親子関係は極めて特別な場合を除いては消滅することはありませんので,いくら生前に親子の縁を切るという話があったとしても,親や子供が相続人であることに変わりありません。

この点はご注意ください。

 

このように,誰が相続人となって,その相続分がどうなるかということについては,それぞれのケースで変わってきますので,自分のケースがどうなるのかわからないとお悩みの方は当事務所までご相談ください。